ポートフォリオの作成は,通常メンターと呼ばれる,既にポートフォリオの作成経験のある大学院生または大学教員によるサポートを受けながら進行します。一般的に作成の最初から最後まで一貫して同一メンターが担当します。
メンターの役割は,作成者が安心できる環境を用意し,建設的で深い振り返りに集中できるよう,支援することです。専門家同士で説明しなくても通じる用語を排するため,メンターはやむを得ない場合をのぞき作成者の専門領域外の人が担当となります。また,新たな視点からの意見をもらうことによって,今までにない気づきを得てもらうためでもあります。さらに,専門家同士で生ずる学問領域の細かい議論に陥るのを防ぐという目的もあります。
また,メンターはスーパーバイザーのもとにメンターチームを構成し,チームとして皆さんの作成支援にあたります。
メンターは,ポートフォリオ作成の指導者,評価者ではありません。その役割は,「伴走者」あるいは「鏡」に喩えられます。それぞれの喩えを解説しながらメンターの役割についてさらに説明します。
「伴走者」 としてのメンター
ポートフォリオ作成の主役は言うまでもなく作成者本人であるみなさんです。作成プロセスにおける振り返りもまた,皆さんが自身でおこなうものです。あまりにも違う方向に向かいそうなときには,メンターが軌道修正を行いますが基本的にはメンターの作成プロセスに寄り添うイメージでサポートを行います。また,作成は労力を要しますし,内省が進む過程において挫けそうになることもしばしばです。内省自体を辛く感じる瞬間もあるかもしれません。そうしたときに,作成を続ける気持ちを支え,また,内省に集中できるように「安全な場所」を用意するのもメンターの役割です。
「鏡」としてのメンター
メンターは作成者の心を映す鏡にも喩えられます。作成者の話すことを受けて,繰り返したり,より的確な言葉で言い換えたり,構造を整理したり,まとめたりなどして,作成者の発話からぼんやりと現れる本人の姿や考え方をより明確にする助けを行います。